三代目タツシの跡継ぎ物語 第五章 船出。

約6年の会社員生活を経て西島眼鏡店に入社した27才タツシ。

両親を先生としての現場学習と自学、外部講習などと共に実務経験を積み、日本眼鏡技術者協会の認定眼鏡士資格を取得しました。

 

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というとスマートですが、

今は「美調整」と名付け自店の「文化」と思っている掛け具合調整も、初めての時は殆どやっているフリ。でもそれを気取られまいとした覚えがあります。

その他に初期の事で印象に残っているのは、ウインドディスプレイの作り込みを始めたこと。

初めてのウインドディスプレイは、父の撮った、熟した柿がポツンと枝先にある写真の前に、本物の柿を一個置きました。何とも超絶にシンプルですが、今思えば、お店を楽しい場とすることのスタート地点であったと思います。

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「 ↑数メートルの長いマフラーをたなびかせた馬が、赤いプレゼントの包みを咥えて走っているウインドディスプレイ。マフラーはリカさん(家内)の手編みです。」

一方、メガネフレームに接する時間が増えるにつれ、自由で明るいヨーロッパ製品のデザインに魅力を感じるようになってきました。

そんなことから入社2年後に、単独でドイツ、オーストラリアの数社を見学しに行きました。でも実のところ「外国に行きたかった」というのが大きな動機でした。旅の後半ではウイーンから飛行機でミラノへ、ミラノから寝台列車でパリへ行ったりと、一人旅を大いに楽しみました。

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 「↑オーストリア、リンツに在るシルエット社。この他に、カールツァイス社、ローデンストック社などを訪問しました。」

その後ヨーロッパ製品を直接買付することも増え、品揃えに特徴が出てきました。

今思えば、それ以前はユーザーにとって、技術的な事柄が主な評価基準であったのが、それを踏まえつつデザインの楽しさが評価の主役になっていく時期だったのだと思います。

それを背景に、品揃えと共に似合うメガネを選び出すノウハウも蓄積され、1997年には良き設計士さんとの出会いで、その時の店の持つ個性に合った店舗デザインに全面改装をしました。

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「↑ このモノクロ写真は、お客さまの いちろうさんが、ライカで撮って現像もして下さいました。」

 

それらで店の持つ力が一方向に集約されたのか、業績は表面的には順調でした。

しかし、「あの事件」でその内実があらわになりました。

続く

 

101周年 西島眼鏡店 三代目 西島タツシ

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